技術
GeminiのAIコードレビューを使って開発スピードが落ちた体験談
2025/07/15
こんにちわ!
QuestBoardでテックリードをしている上原です。
近年、ソフトウェア開発の現場でAIの活用が急速に進んでいます。
私自身、
「AIを活用して開発スピードが爆速した!」や、
「生成AIだけでサービス作ります!」みたいなサービスもよく見聞きします。
で今回は、プルリクエストがあった際のコードレビューで、生成AIを活用してレビューする人の効率化について、実際に使ってみて約2ヶ月間くらい経ったので、そちらについての感想を書いて見ようと思います。
結論からいうと、
AIを活用したからと言ってシステム全体の開発スピードがあがるという認識が語弊があると思っているのと、
実際、AIをコードレビューに使って起きたメリット・デメリットについて書いていきたいと思います。
また「生成AIだけでサービス作ります!」みたいのは、
ある程度の動きがあるものは出来ますが、生成AIを活用して一発で思い描いてたサービスが出来上がるってことは現実的にありえません。商用利用は尚更です。
導入の背景
㈱QuestBoardでは、現在、以下の3つのサービスを展開しています。
コミュニティ型実践サービス「クエストボード_ 」
共創POCスタジオ「ポックリエ 」
システム受託開発パッケージ「ジッソウ」
私が関わっている事業は、自社サービス以外の「ポックリエ」と「ジッソウ」になります。
当社エンジニアのコードエディターは、
cursor 7割
vscode 2割
JetBrains 1割
のような分布で使っています。
いまはどこのコードエディターも生成AI搭載だったりIDEが統合されているので、
会社で特に縛りはなく個人で使いやすいものを選んで使っています。
プロジェクトでも
Claude Codeの有料版を入れて、
issueから自動PRを生成するの試したりしています。
軽微な修正なら、ほぼ人が実装しなくて、簡単なレビューだけで済むような形です。
で今回は、当社は各プロジェクトのソースコードはGitHubで管理しているのですが、
GitHubでPRがあった際に、Gemini code アシストや、ClaudeのAPIキーを発行してコードレビューの要約もしてみようということで導入しました。
参考サイト:Geminiコードアシスト
導入
GitHubのThird-party AccessのGitHub AppsからGemini Code Assistを追加して、
いくつかのプロジェクトに入れてみました。


これで実際にPRがあると、Gemini code Assistから要約と対応したほうが良いことなどコメントしてくれます。
(実際のコメント内容はマスクをしています)

これでレビュワーの負担軽減にもなると期待してました。
実際の使ってみた期待と現実のギャップ
まず使ってみて要約なども日々精度が上がっていて期待通りでした。
しかし、実際にしばらく運用していくと、
以下のいくつかの問題点が出てきました。
AIのコメントを残すか消すかルール化がされていなかった…
AIのコードレビューの提案で今必要としてないセキュリティ面での対応などもある
AIの「おせっかい」が招いた遅延
なぜこのような事態になったのでしょうか?
その主な理由は、AIの設定をカスタマイズしていなかったのと、
デフォルトだとAIが生成するレビューコメントの性質にありました。
AIは確かに多くの提案をしてきましたが、
その多くは、現在の開発フェーズやプロジェクトの特性上、いま必要とされない対応だったのです。
例えば、将来的な拡張性を考慮した過剰な抽象化の提案や、
現状のパフォーマンスには影響しない微細な最適化の提案など、
方向性としては正しいものの、その時点での開発には不要な指摘が多数ありました。
判断コストの増加
レビューしていたエンジニアは、AIの提案一つ一つに対して「この指摘は対応すべきか?」
「今は優先度が低いのではないか?」という判断を迫られることになりました。
自分で判断できない場合は、ビジネスサイドへ判断してもらっていました。
AIは効率化をもたらすはずでしたが、
むしろこの「AIからの提案への判断」という新たな作業が加わり、結果的に開発プロセス全体のボトルネックとなったのです。
レビューする工数を下げるための効率化が、逆に工数を増やしてしまうこともあると実感しました。
対策と今後
導入して約2ヶ月間の感想としては、
AIのコードレビューに導入する際には、
エンジニアチームでのルール決めと、
プロジェクトに合わせたAIコードレビューのその適用範囲や提案の粒度をカスタマイズする必要があることを学びました。
対策を施したあとは、レビューの要約や提案も精度も高くかなり効率化に役立っています。
AIはあくまでツールであり、その真価は人間の使いこなし方にかかっています。
QuestBoardでは、今回の経験を活かし、AIが真に開発スピードと品質向上に貢献できるよう、試行錯誤を続けていきたいと思います。